Facility Guide

施設案内

施設案内

喫茶室

喫茶室 写真

喫茶室は池に面していて、ガラス越しに『うつろひ』が見えます。その向こう側には「大地」「月」「太陽」の各展示室と同時に、那岐山頂を望むことができます。手前に「大地」が広がり、左右に「月」と「太陽」が見え、また借景という形で那岐山が広がる喫茶室からの景観は、六曲一双の日月山水図屏風を想起させます。

◯営業時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
◯休業日
美術館の休館日(月曜日 ※月曜日が祝日の場合は開館、祝日の翌日)
※喫茶室は、現在平日(火~金)のみの営業とさせていただいております。
 美術館は通常通り開館(月曜日は休館日)しております。
◯お問い合わせ
TEL:0868-36-5811

南棟(町民)ギャラリー

南棟(町民)ギャラリー 写真

併設されたギャラリースペースでは、年間約10本程度の現代美術の企画展を開催しています。県内の若手作家の紹介から、ベテラン作家の回顧展、また県外の作家の展示も積極的に行っています。

◯営業時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
◯休業日
美術館の休館日(月曜日 ※月曜日が祝日の場合は開館、祝日の翌日)
◯お問い合わせ
TEL:0868-36-5811

北棟ギャラリー

北棟ギャラリー 写真

展示室「大地」を通り過ぎると、ギャラリーがあります。
ここは NagiMOCA に関するデッサン、模型、ドローイングなどを展示しています。

左手には展示室「月」、右手には展示室「太陽」があります。

太陽前室

荒川修作+マドリン・ギンズ

太陽前室 写真

奈義の龍安寺

明るい小部屋に踏み込むと、もう何か奇妙な感じなのである。足元からの光に浮び上がるこの部屋は、中央には傾いた黒く太い円筒が床から天井まで続いており、それは光を吸収してまるで〈闇〉が実体化したもののようである。床は黄色い地に黒い線で描かれた迷路、天井にはそれが〈反転〉した黒地に黄色い線の迷路。〈迷路〉はアラカワ/ギンズの得意のモティーフであり「反転性」は彼らのキー・コンセプトである。しかも天井も床も中央に向かって盛り上がる傾斜が付いている。見えない何かが、彼らはそれを「ブランク(空白=体)」と呼ぶが、渦巻いている気配。それにしても身体は何か新しい歓迎を受けているようだ。

白い壁もどうやら隅が直角ではないらしく、水平方向の遠近感もおかしい。妙に身体が浮遊しているような感じがするが、体重は足にかかっているので、その床との接触面を支点にした垂直軸だけは、何とか身体の日常の記憶が維持しようとしているらしい。しかし足元からもうバランスに狂いが生じている。
壁の一つの面には、奈義町に住む人達が/を撮った様々のスナップ・ショットが貼られている。これもアラカワ/ギンズの気くばり。安心と不安。快適さと不快感。何と何がアンバランスなのたろうか?
何がギヤップなのか?

さてこれが序章(プロローグ)である。

太陽前室 写真

斜めの不気味な黒い円筒は、後ろに回り込めば入り口があって、これは上階に繋る螺旋階段であった。人ひとりがやっと通れるほどの狭さ。螺旋階段の柱の主軸は傾いているし、手探りでまるで「胎内潜リ」のように、黄色い段々を登ってゆく。階段室の出口に辿り着こうとすると階段のいくつかがない。足で探ると階段が黒く塗ってあって見えないだけなのだった。注意を全身で払えということなのかととりあえす納得する。上方には凸面鏡があり、自己と空間の像の変形によって遠近と上昇下降のイメージが狂わされる。そして問題の〈部屋〉に出る/入る。

<『奈義町現代美術館』常設カタログ「Nagi MOCA 磯崎新」より抜粋>

フロアマップ

フロアマップ

建物紹介

建物 写真

奈義町現代美術館・図書館・レストラン(※1)の建築工事として今回完成した建物(※2)は、いくつもの独立した棟の集合体である。そのなかで奈義町現代美術館(Nagi MOCA)と呼ばれようとしているのは、入口をはいって、右手の池に面した喫茶室から北側の奥にあたる部分である。左手の2、3階には、図書館があり、その下階には小さい町民ギャラリーがもうけられている。レストラン棟(※1)はさらに南側に分離されているが、ここはこの美術館を訪れるであろう人達の食事や休息の場所で町の特産品の売場もあり、建物全体が竹林で囲われている。これらの施設は基本的に町民の利用のために建設された。だが現代美術館だけはこの地域のひろがりを超えて、一足とびに世界の美術や美術館の動向ともかかわる意図をもって構想されている。
具体的には、ここでは3人だけのアーテイストの作品が半永久的に展示される。さし当たり、荒川修作の棟を〔太陽〕、岡崎和郎の棟を〔月〕、宮脇愛子の棟を〔大地〕と呼んでいるが、それは作品の内容を示したものではなく、むしろ建築的な形態より連想され「見立て」られたものである。

<『奈義町現代美術館』常設カタログ「Nagi MOCA 磯崎新」より抜粋>

※1 開館当時レストランだった建物は、現在は別の用途で活用されている。
※2 美術館は1994年(平成6年)4月25日に開館した。

さてこれが序章(プロローグ)である。

建物 図

将来、奈義町の文化的中心軸となるように計画されているシンボルロードに沿って、奈義町現代美術館、奈義町立図書館、奈義町観光案内所の建築群が配置されている。現代美術館、町立図書館は共通のエントランスを持ち、芝生広場の南端、竹藪の中に観光案内所が設けられた。町立図書館、観光案内所は前面のシンボルロードにパラレルに置かれるが、現代美術館は道路計画からの制約を飛び越え、この土地の自然条件にもとづいた固有の軸線を持つ。すなわち「太陽」の軸は正確に南北軸と重なり、「月」の平坦な壁は中秋の名月の午後10時の方向を指し、「大地」の長軸は秀峰那岐山の山頂に向かっている。

この布置の「見立て」を更に拡張していくと、那岐という聖なる山を中央に据えて、手前に〔大地〕がひろがり、左右に〔月〕と〔日〕が配されるという構図となり、容易に、六曲一双の日月山水図屏風を想起することも可能であろう。とはいっても、最初からこのような日本の紋切り型(クリシェ)をここで組みたてようとしたのではなく、まったく個性の違う3人のアーティスト達とその作品の展示される空間についての議論を重ねるうちに、この形態がみちびきだされ、この布置が無理なくおさまったところから、日月山水図への「見立て」がうまれたという方がいい。

この美術館では従来の美術品と展示空間の関係が逆転している。これまで、美術館には作品を展示するギャラリ一があり、他の場所から運ばれた絵画や彫刻がそこに展示され、一定期間を経て持ち去られるという展覧会の型を繰り返すことになっていた。ところがここではアーティストの作品そのものとして構想された空間が最初にあり、建物はそれを覆うシェルターにすぎない。とはいっても輪郭をかたちづくる建物と作品とは相関関係で、幾度も往復する作業がなされた。結果として、この内部は、特定の作品のための、固有の空間となり、展示替えをするニュートラルなギャラリーではない。これを比喩的に説明するには、寺院の金堂を思い浮かべればいい。そこでは仏像がまず創られており、建物はそれを覆う鞘堂として建設された。美術館という枠が拡張して、美術品と建物が一体化している。私はそういう状態をつくりだすことが、すなわち≪建築≫であると考えているが、それを美術館という広義の制度の展開過程に位置づけることも可能だろう。それを第三世代美術館と呼ぶことをここで提唱したいのだが、これを私は次のように要約した。

・  ・  ・

NagiM0CAは、まったく新しいタイプの現代美術館です。
美術館という19世紀以来、歴史的に展開している建築型に、それを位置づけると、「第三世代の美術館」と呼ばれるような内容と形式をそなえています。
これが、岡山県、奈義町という全国的にはほとんど無名の町に誕生することは、今日、地方自治体が“箱物”文化施設を無造作に乱立させているなかで、その企画のユニ一クさがとりわけ注目されることでしょう。
世界の美術界においても最初のこころみといっていいこのNagi M0CAは、現代から未来へむけての美術に対応する建築的空間のあたらしい範例となるでしよう。

Nagi M0CAでは、あらかじめ3人の作家、荒川修作、岡崎和郎、宮脇愛子に、これまでの美術館のギャラリーでは収容不能の作品を構想してもらい、それを空間化し、建築にまとめました。それぞれの作品は内部にはいり、身体をもって感知されることを意図していますが、同時に外部からも明らかに認知できるような形態をもっています。さしあたり、太陽、月、大地が象徴的にその作品=場のメタファアとして用いられています。

それぞれの作品は、現場制作(in-situ)されます。Site Specificと呼ばれる形式です。内部空間の全要素(形態・光・素材・視点・時間…)が作品に組みこまれているので、観客はその現場に来て、中にはいって、体験してもらわねばなりません。全身体感覚をつうじて瞑想することが共通に期待されています。写真・印刷・ヴィデオなどの伝達メディアでは、この空間的なアウラをどれだけ伝えうるか、全部は無理でしょう。

建築家とアーティストが共同制作した空間的作品、それが未来の美術をコレクションし、かつ展示する唯一の手段であり、それが公共の施設として実現することに、このNagiM0CAの重要な意義があると考えます。

<『奈義町現代美術館』常設カタログ「Nagi MOCA 磯崎新」より抜粋>

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