明るい小部屋に踏み込むと、もう何か奇妙な感じなのである。足元からの光に浮び上がるこの部屋は、中央には傾いた黒く太い円筒が床から天井まで続いており、それは光を吸収してまるで〈闇〉が実体化したもののようである。床は黄色い地に黒い線で描かれた迷路、天井にはそれが〈反転〉した黒地に黄色い線の迷路。〈迷路〉はアラカワ/ギンズの得意のモティーフであり「反転性」は彼らのキー・コンセプトである。しかも天井も床も中央に向かって盛り上がる傾斜が付いている。見えない何かが、彼らはそれを「ブランク(空白=体)」と呼ぶが、渦巻いている気配。それにしても身体は何か新しい歓迎を受けているようだ。